気になる不調を解消!
<第4回 脳疲労>

蒸し暑い夏が過ぎても、なんとなく疲れやだるさが取れず、仕事の効率も下がってしまう…、そんなことはありませんか。実はその不調、脳が疲れた状態、いわゆる「脳疲労」かもしれません。気になる不調や症状の原因、予防・対処法を専門の先生に教えてもらうシリーズ。今回はこの「脳疲労」についてご紹介します。

監修:

小澤 勝男

〉〉〉プロフィール

まずはセルフチェック!

 次の項目に当てはまるものがないか、セルフチェックをしてみましょう。3個以上当てはまる場合、「脳疲労」の傾向にあります。

「脳疲労」の原因と症状は?

 人間の脳は「大脳」「小脳」「脳幹」で構成されています。このうち脳の80%を占める大脳は司令塔のような働きをしています。言語の理解や思考・判断を行う「大脳新皮質」、自律神経や感情をコントロールする「大脳辺縁系」に大きく分けることができます。通常、外部からの情報は「大脳新皮質」で、喜怒哀楽などの感情や意欲、食欲など内側の情報は「大脳辺縁系」で処理され、互いに情報共有しながらバランス良く働いているのです。
 しかし、情報過多や、大きなストレスなどで負担が掛かると、それぞれがキャパオーバーとなり、うまく連携が取れない状態になります。
 これにより脳の働きが低下することを「脳疲労」と呼び、「疲れが取れない」「記憶力の低下」「ぼんやりしてしまう」「ぐっすり眠れない」「物事に飽きやすい」「ネガティブ思考になる」「わけもなくイライラする」「不安が続く」「物忘れやうっかりミスが多くなる」などの兆候が現れます。さらに放置すると、頭痛や動機、息切れ、めまい、下痢や便秘など自律神経失調症の症状を引き起こし、ウツなど深刻な事態へと発展することもあります。

~先生からのアドバイス~
「脳疲労」の予防と対処法

■デジタルデトックスを行う

 パソコンの使用が日常的になっていますが、長時間の作業は脳が常に大量の情報を処理している状態となり、処理能力がダウンしてしまいます。1時間パソコン作業をしたら5分休憩を取るなど、脳を休ませてあげることが大切です。
 また、最近では用がなくてもついスマホを見ることが習慣になっている人が非常に多いですが、スマホも使う時間が長くなると情報のインプットが多すぎて脳疲労に陥りやすくなります。
 短時間でもいいので、1日のうちで意識的にパソコンやスマホを手放す「デジタルデトックス」を行い、外の景色を眺めながらゆっくり散歩するなどして、デジタル端末に触れない時間を作りましょう。
 また、就寝直前のパソコンやスマホの操作は交感神経を優位にさせ、心身が興奮状態のままとなり睡眠の質を低下させます。就寝前はパソコンやスマホを触らず、副交感神経を優位に働かせることが大事です。

■ストレスを溜めない

 最近では外に出る機会も減り、いつの間にかストレスが溜まってしまうことがあります。散歩やショッピングに出掛けたり、趣味を楽しんだり、家の中では音楽や香りを楽しむなどして、自分なりのストレス発散方法を持つようにしましょう。
 また、親しい人と交流したり、会話したりすることで、不安やイライラの気持ちが和らげられます。
 様々な方法で脳をストレスから解放してあげることが大切です。

■質の良い睡眠を取る

 一般的に睡眠時間は6~8時間が標準的といわれていますが、疲れを取るためには時間だけでなく質も重要です。睡眠は浅い眠りの「レム睡眠」と、深い眠りの「ノンレム睡眠」が一定の周期で繰り返され、レム睡眠の間は体の疲労を回復し、ノンレム睡眠の間は脳が休息し、脳の疲労を回復させるといれています。そのため、睡眠途中で目を覚ましてしまうことなく、安定した質の良い睡眠を取ることが、心身の疲労を改善する大事なポイントとなります。
 睡眠の質を上げるためには、生活サイクルを整えること。就寝・起床時間は一定にし、毎日だいたい同じ時間に食事を取るなど、規則正しい生活を送りましょう。
 また、睡眠環境も大切です。就寝中に体が冷えたりしないよう、季節に合わせた寝具を選び、寝室は快適な温度を保ちましょう。秋冬は20℃前後、春夏は26℃前後に保つのが良いといわれています。

■就寝前の入浴で心身をリラックスさせる

 1日の終わりにはシャワーだけでなく湯船に浸かって疲れを取りましょう。入浴により体内の深部温度を上昇させることで、休息時に働く副交感神経が優位になります。加えて、血流が促されることで筋肉が緩み、心身をリラックスさせることもできます。
 38~40℃のお風呂に10~15分程度、ゆっくり浸かるのがおすすめ。就寝の1~2時間前に入浴することで、布団に入る頃に体温が程よく下がり、質の良い睡眠も得られます。

■適度に運動をする

 適度な運動をすることで、満足感や開放感、リフレッシュ効果が得られ、脳疲労が回復します。運動というと、ランニング、水泳など本格的なスポーツをイメージする人が多いかもしれませんが、激しい運動は逆にストレスが溜まってしまうこともあります。ゆっくり散歩をしたり、自然が多い公園まで自転車で行くなどでもOK。あくまで自分の体力に合った運動を「楽しむ」気持ちが大切です。

「脳疲労」まとめ


■パソコンやスマホの長時間の使用で、大量の情報を処理している状態が続くと、脳が疲労を起こして処理能力がダウンし、体に様々な不調をもたらします。
■脳疲労は心のストレスによっても起こるので、趣味や運動など自分なりのストレス発散方法を持ちましょう。
■脳の疲労回復には睡眠が効果的。適度な運動や入浴を取り入れ、質の良い睡眠に導くことも大切です。

さまざまなことがデジタル化され、パソコンやスマホに接する時間が増えた現代社会。インターネットに頼らず、人とのコミュニケーションを取って情報収集をしたり、外に出掛けて自分の感性を磨くなど、情報処理のスピードを緩めてあげましょう。あえて「何も考えない」時間を作り、脳を休ませることも大切です。日頃酷使している脳を少し休めて、脳疲労を防ぎ、体と心の健康を保ちましょう。

※この記事内容は、執筆時点2022年9月12日のものです。

小澤 勝男(おざわ かつお)/医学博士
1967年名古屋大学医学部卒業。名古屋保健衛生大学(現藤田医科大学)胸部外科助教授、静岡済生会総合病院院長、東海医療工学専門学校校長などを務め、現在は東海医療工学専門学校非常勤講師。日本外科学会認定登録医、日本胸部外科学会指導医、日本心臓血管外科学会名誉専門医、日本循環器学会専門医、日本医師会認定産業医。

TOPページに戻る