定年前後の
お金の変化を知っておこう

人生100年といわれる今、老後の生活、中でも「お金」について心配されている方が多いようです。この不安を少しでも解消するために「老後のお金を守る」をテーマに、専門家のアドバイスをシリーズでお送りしています。今回は、定年前後のお金の変化についてご紹介します。

監修:

深田 晶恵

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「収入ダウンの崖」は3回ある
なるべく長く働いて収支を改善

 老後に不安を抱えている人は少なくありませんが、それは「具体的な不安」ではなく、「漠然とした不安」であることが大半です。定年前後に起きる変化を知り、その変化にどう対処するかを身に付けることで不安の多くは解消できます。

■最初の崖は定年を迎える「60歳」

 そこでまず知っておきたいのは、60歳以降の収入の変化です。60歳以降には収入ダウンの崖が3回あります。
 今の現役世代が公的年金の受給を開始するのは原則65歳です。60歳で定年を迎えると65歳まで収入が途絶えてしまうので、多くの人は65歳まで何らかの形で働くことになります。同じ会社で再雇用されるのが一般的ですが、現役時代と同じ給料を支払ってくれる会社は、ほとんどありません。会社にもよりますが、50代の手取り額が30%~40%にダウンすると覚悟しておきましょう。
 「働き方改革」によって「同一労働同一賃金」を定めた法律が施行され、大企業は2020年4月から、中小企業は2021年4月から適用されました。これを受けて再雇用後の待遇改善に取り組む企業も出てはいますが、収入は厳しめに見ておきましょう。

■2回目の崖は年金受給開始の65歳

 年金額は人によって異なりますが、厚生労働省が公表している平均的な収入で40年間働いた人の年金額(老齢基礎年金+老齢厚生年金)は夫婦2人で月額約22万円(2023年度)です。

■配偶者のいる人は3回目の崖も

 配偶者が亡くなると世帯の年金収入もガクっと下がります。1人になっても生活費は半分にはならないので家計は厳しくなります。

収入がダウンしても
貯蓄を減らさない工夫を

 3つの崖を前提にすると、60歳までは老後資金を貯める時期、60代前半は再雇用などで働き、貯蓄を減らさないようにする時期。さらに70歳まで働くと、その後の暮らしが楽になります。また、年金生活に入ると、足りない分は貯蓄から取り崩すことになりますので支出のコントロールが必要です。

※この記事内容は、執筆時点2023年8月1日のものです。

深田 晶恵(ふかた あきえ)
ファイナンシャルプランナー(CFP®)。会社員を経て、1996年にFPに転身。すぐに実行できるアドバイスをするのがモットー。近著に「まだ間に合う! 50代からの老後のお金のつくり方」(日経BP)などがある。

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