その不調、住環境のせいかも?
快適な住居の暑さ・寒さ対策

1日の大半を過ごす住環境は、実は健康面に大きな影響を及ぼします。健康かつ快適に過ごすためのポイントは、暑さと寒さの仕組みを理解すること。リフォームなしで簡単にできる対策を実践しましょう。

監修:

山田 浩幸

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インフルエンザ、熱中症……住環境に潜む健康リスク

 「外出先でインフルエンザのウイルスに感染してしまった」「散歩していたら熱中症にかかってしまった」。普段よく耳にする会話のイメージから、インフルエンザや風邪、熱中症などは“屋外の活動で発症するもの”と認識されがちです。しかし、それらは屋内でも十分に発症する可能性があり、特に、住環境によって引き起こされることが多々あります。その主な原因となるのが次の3つです。

温度

 夏の暑い室内は睡眠障害や熱中症を、冬の寒い部屋では風邪や冷え性を引き起こすことがあります。

②湿度

 40%以下になると風邪やインフルエンザなどのウイルスが繁殖しやすくなります。反対に、湿度が高過ぎるとカビやダニを繁殖させ、喘息などの原因になることも。

③換気

 換気がうまく行われていないと汚染された室内空気の除去ができず、めまいや頭痛、喉の痛みなどを引き起こすシックハウス症候群にかかったりします。
 このように、住居の「温度・湿度・換気」は健康面に大きく影響を及ぼします。冷暖房だけでコントロールすることは非効率であり、また光熱費節約のためにも、以下の対策を実践してみてください。

夏の対策

日差しを外側でカットし、南風を取り入れよう

 夏の暑さの主な原因は「日差し」と「湿度」。温度とともに湿度を下げることで、ジメジメした夏の不快な暑さを解消することができます。

対策1. 日差しは外側でカット

 日差しは住居の内側ではなく、外側でカットするのが遮光の鉄則。ブラインドやカーテンでは日差しが内側に入り、室温が上がってしまいます。そのため、よしずや遮光ネット、オーニング(屋外に取り付ける可動式のテント型カーテン)など、日差しを外側で遮るものがベストな選択肢。よしずや遮光ネットはホームセンターなどで安価に購入でき、取り外しも簡単です。オーニングは日よけの角度を調整できるので、季節や時間帯に合わせてコントロールすることができます。夏の日差しのエネルギーは東西が強いので(下の図参照)、特に東側と西側の窓はしっかりと日差しをカットするようにしましょう。

対策2. 温度差換気を行う

 室内の温度や湿度をコントロールする際は、自然対流の原理を知ることが大切です。暖かい空気は建物の上部に溜まりやすく、冷たい空気は暖かい空気に向かって上昇(移動)するということを頭に入れておきましょう。
 この原理を踏まえて、建物や部屋の高い位置にある窓を開け、暖かい空気を外に逃がす。これを温度差換気と呼びます。冷房をつけてもなかなか涼しくならないときは、温度差換気を行って暖かい空気を排出すると冷房の効きが良くなり、省エネにもつながります。
 この原理は湿度対策にも有効です。気温が10℃以上の場合、人間は湿度が上がるほど暑さを感じやすくなるので、温度差換気を行って湿気を排出できれば涼しさを感じられるでしょう。

対策3. 風の通り道をつくる

 エアコンが苦手な方や省エネしたい方は、自然の風で涼むのがおすすめです。地域によって異なりますが、夏は南から北に向かって風が吹くもの。窓は1カ所だけ開けても意味がなく、南側と北側の2カ所の窓を開けて風の通り道をつくりましょう。意外なほど風を感じられ、涼しい上に換気もできる一石二鳥の方法です。
 その際、風の通り道に大きな家具などがあると気流を妨げてしまいます。南側と北側の窓の通り道には、できるだけ遮るものを置かないようにしましょう。

冬の対策

断熱性を高め熱気を有効活用しよう

 冬の寒さの主な原因は、室外への熱気の流出と室内の温度差です(下図参照)。できるだけ日差しを取り込み、窓の断熱性を高め、空気を撹拌すれば、1日中暖かい部屋を実現することができます。

対策1. 熱の流出を防ぐ

 窓から出て行く熱を抑え、部屋を暖かく保つには、断熱カーテンがおすすめです。また、遮光カーテンとして販売されているものは断熱性にも優れており防寒効果もあります。
 そして、冬は窓ガラスの結露にも気をつけたいところ。結露を放っておくと、カビやダニが繁殖したり、建物自体が劣化したりする原因になります。結露は室内と室外の寒暖差から発生するため、断熱効果を高めることがポイント。特に北側の窓は結露が発生しやすいので、厚手のカーテンなどでしっかりと断熱対策をしておきましょう。

対策2. 空気を撹拌する

「暖房を使っているのに、部屋が暖かくならない」。その原因は、前述した自然対流の原理によって、暖かい空気が部屋の高い位置に溜まっているから。そんなときは、ファンを使って空気を撹かく拌はんし、暖かい空気を低い位置に移動させましょう。例えば、サーキュレーションファンは、床に置いて天井に向けると部屋中の空気をかきまぜてくれます。扇風機で代用することもできるので、実践してみてください。

対策3. 日差しを取り込む

 上の図で解説したように、夏の日差しの放射エネルギーは想像以上の暑さをもたらします。逆をいうと、冬はその日差しを利用することで、部屋を暖めることができるのです。
 ポイントは、日中に日差しの熱を取り入れ、夜にその熱を逃がさないようにすること。日没とともに、断熱カーテンや雨戸を使って窓から出て行く熱を抑えましょう。その上で、サーキュレーションファンを使って暖かい空気を循環させれば、むやみに暖房を使わずに暖かい室温を保つことができます。
 以上のように、自然対流の原理や風の通り道などを知った上で、「温度・湿度・換気」をコントロールすれば、大がかりなリフォームをせずとも快適な住環境をつくり出すことができます。熱中症やインフルエンザ、風邪などの対策としても、季節の変わり目に室温調整対策を見直してみるとよいでしょう。

※記事内容は、執筆時点2020年8月1日のものです。

山田 浩幸(やまだ ひろゆき)
設備設計者、温熱環境エンジニア。自然の仕組みを活用した住居を独自に研究・開発。『エアコンのいらない家』(エクスナレッジ)は建築業界で話題に。

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