突然はじまる介護
どうしたらいいの?

介護に対して漠然とした不安を持たれている方も多いと思います。介護がはじまるときの状況を知るとともに、介護家族の支援を行っている阿久津美栄子さんからアドバイスをいただきました。

監修:

阿久津 美栄子

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介護がはじまる2つのケース

1つは「病気やけが」の場合。こちらは病院での診断を経てはじまります。もう1つは、「認知症」の場合。こちらは家族など身近な人が気付いてはじまることが多いです。

阿久津さんのアドバイス

病気やけがの場合は、病院のソーシャルワーカーが介護保険制度の利用を促す機会があり、比較的スムーズに進みます。難しいのは認知症の場合で、長い期間治療に至らないまま、重症化してしまうケースもあります。それは家族・本人も"認めたくないという思い"があるからです。

家族はまず「否定」から入る

健康が当たり前だった家族の日常が突然変化し、簡単には受け入れられません。特に認知症の場合は、「会話や行動がおかしい」ことに驚き「なぜ?」と、とまどってしまいます。家族の変化を受け入れ、介護を続けられるようになるには時間が必要です。

阿久津さんのアドバイス

初めて経験をすることも多く、先の見えない介護のはじまりは精神的にも辛くなる時期になります。初動の時期は、このように心のバランスを崩すことを知っておくだけでも介護には有益です。

介護には必ず終わりがある

介護の期間は数カ月の方もいれば、数十年続く方もいたりと、人それぞれですが、必ず終わりがあります。介護される方やその家族に悔いが残らないよう、最期のときをどう過ごすのかを考えておく必要があります。

阿久津さんのアドバイス

介護の最期を意識するかしないかでは、介護の時間を有効に使えるのか悔いが残るのかの大きな違いになります。介護をしているときに、家族との関係を修復したり、介護される方との有意義な時間を過ごせるかどうかは、意識するだけで変わってきます。

介護の全体像を知っておきましょう

突然はじまり、いずれ終わりを迎える介護。その期間は、時系列でみると①混乱期②負担期③安定期④看取り期と、大きく4つのステップに分かれています。いつ、どのような状況になるのかが事前に把握できていれば、介護者の心理的負担も軽減されます。下記、「介護のロードマップ」を参考に、介護のはじまりから終わりまでの全体像を知り、要介護者と家族ともに悔いのない有意義な時間を過ごしましょう。

阿久津さんのアドバイス

介護に正解はなく、それぞれの形があって当たり前です。また、介護は人との関係が重要です。特に介護保険を利用する際、ケアマネジャーとのコミュニケーションが上手くいかないこともあります。そんなときは無理に合わせたりせず、きちんと伝えることが大切です。家族と介護専門職との関係構築は、先の見えない介護には必要です。また、ひとりでも多くの協力者を得るためにも、職場や家族で話し合い、周囲に助けを求めましょう。

■介護のロードマップ

介護についてはこちらでも紹介しています。

■介護あっぷあっぷくん
介護未経験者に役立つ情報を教えてくれるLINEアカウント

※この記事は、都道府県民共済グループ発行「介護のことがわかる本」の抜粋です。
内容は、執筆時点2024年8月1日のものです。

阿久津 美栄子(あくつ みえこ)
1967年長野県生まれ。自身の介護経験からNPO法人UPTREEを立ち上げる。介護者のための「介護者手帳」を製作し、介護家族の支援モデルの確立に注力している。2019年4月「介護あっぷあっぷくん」(介護未経験者・初心者向に向けて介護の基本的な情報、介護保険の仕組み、介護に利用できる公共サービスなどを教えてくれるLINE公式アカウント)をリリース。著書に「ある日、突然始まる 後悔しないための介護ハンドブック」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、「家族の介護で今できること」(同文書院)。

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