五感でコミュニケーション
子どもは「感覚」が勝る

子どものすこやかな成長を願いながらも、どうするのが良いのかわからず日々悩みを抱える方も多いのではないでしょうか。この連載では「子どもの心を守る」をテーマに、幼少期から思春期までのお子さまとの向き合い方を小児科医の小沢美和先生にお伺いしました。全6回でお送りするシリーズ前半「幼児期篇」の第3回目は「五感」についてです。

監修:

小澤 美和

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子どもに伝わるのは
言葉よりも「振るまい」

 幼児期はまだ言葉が達者ではなく、発展途上の段階。その代わりに五感が優れている状態にあります。「〇〇させなきゃ!」と焦ってあれこれワーっと言っても、言葉通りに伝わらないし動いてもくれないものです。
 例えば、かんしゃくを起こしたときに、やわらかい毛布などでフワッと包んであげるだけで落ち着くことがあります。
 Vol.2でもお話ししたように、お子さまの好きな時間を一緒にすごすことはとても大切です。その際、特にこの幼児期は、言葉の内容よりも親の楽しんでいる表情や喜んでいる声色、手振りなどの方がより影響力が大きいコミュニケーション手段だと言えます。

幼児期は「真似る」ことから
「学び」が始まる!

 子どもは「おもしろい!」と感じたときに、それを真似するんですね。語源から見ても「真似る」→「まねぶ」→「学ぶ」と派生しているように、学びのルーツは真似にあり、大きな成長の源となっています。
 特に五感の優れた状態にある幼児期のお子さまが目の当たりにする情報は、圧倒的な影響を及ぼすのです。
 ただし、良いものばかりを真似るわけではないので、悪い意味での影響もあり得ます。仮に家庭内で暴力的な体験を見聞きしたとすれば、その支配的な関係性は子どもにも根を下ろしかねません。
 教育のためにどんなに道徳的な本を読み聞かせるよりも、実際に五感で感じたことの方が伝わりやすいということを心に留めておいてほしいと思います。

親だけではなく
兄弟姉妹からも「まねぶ」

 「下の子の方が育ちが早い」とよく聞きますが、あながち間違った話でもないかと思います。真似る対象は大人よりも子どもというように、身近な人に興味を持つ傾向があります。兄や姉がいると「あっ、お兄ちゃんこういうことしてるな」「お姉ちゃん怒られたから、自分もやめておこう」と採用しやすいようです。
 これも幼児期の感覚的に優れた段階だからこそ起こる現象です。「まねぶ」機会が身近に増えることは、成長の観点でもメリットが多いと考えられますね。

子どもは親の鏡
だからこそ、養育者も安寧を

 子どもにニコニコとたくさん話しかけることで、笑顔や言葉が豊かに育つことがあります。育児書やインターネットの情報通りに育てられずに不安を募らせ、眉間にしわを寄せてわが子をのぞき込む毎日では、例え幼児期でもしわを寄せることもあり得ます。生まれつき持って生まれたものに加え、毎日の生活でも親を見て育つことで、子は親に自然と似てくるものです。
 世の中の不安な状況下もありますが、まず養育者も笑顔でお子さまに向き合えるよう、大人にとっても安心して穏やかでいられるための時間を優先することがあって良いのです。

教えて!小澤先生
平気で嘘をつき謝りもしなくなったわが子。
どうすればいいでしょうか…

謝らないことに不安や怒りを感じることも無理はないかと思います。ただ、謝らないわが子を怒るのではなく、まずは嘘をついちゃったその子の気持ちを想い図ってあげてください。素直に謝ったからと言って、嘘をつかなくなる訳でもないですし。
噓をついた理由はすぐには分からないかもしれませんが、𠮟りつける前に話を聞いてあげれば、だんだんその背景が見えてくると思うんですよ。
例えば宿題が済んでないのに「やった」と言ったとして、叱られたくない一心からの嘘だとすれば、それを何度叱ってもまた繰り返すだけです。
そんなときは、理由に寄り添ってあげた上で、本人が宿題に向き合えるよう親もいっしょに取り組むことです。簡単なことではないですが、お子さまに嘘をつかせないために努力することが有用です。

※この記事内容は、執筆時点2022年1月26日のものです。

小澤 美和(おざわ みわ)
聖路加国際病院 小児総合医療センター 医長。子ども医療支援室 室長。AYAサバイバーシップセンター 副センター長。
病気の初めから終末期まで、病気になった親子を取り巻くがんに係る諸問題の第一人者。また、乳幼児健診や学校医として、健康な子どもも病気になった子どもも、その子なりの成長を支えるケアのスペシャリスト。看護師、保育士らと共にきょうだいレンジャーとして、病気のこどものきょうだい支援に取り組み、NPO法人グリーフサポートリンクと協働で開催する親と死別した子どもの集いや、子どもを亡くした親の自助グループの運用に携わっている。
親子に読んでもらいたい絵本「おかあさんだいじょうぶ」(小学館)共著。年数回、小学校~高校で「がん教育」を担当。小児科専門医/指導医、子どものこころ専門医/指導医。

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