遺族年金は誰がどんなときに受け取れる?

遺族年金についてご存知でしょうか?国民年金や厚生年金の加入者が亡くなったときに遺族が受け取れる、公的年金のひとつですが、受け取るための要件が細かく定められています。どんなときに受け取れるのか、誰が受け取るのかなど、今回は遺族年金の基本について解説します。

監修:

高橋 浩史

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遺族年金は公的年金制度のひとつ

 公的年金制度には、老後生活の基本になる「老齢年金」、病気やけがが原因で障害が残ったときの「障害年金」、万一の事が起きたときの「遺族年金」の3種類があります。

 この中で、家計を支えていた人が亡くなった場合、その人に生計を維持されていた家族(配偶者や子ども)に、経済的な支えとして支給されるのが遺族年金です。

 この場合の「生計維持」というのは、基本的に同居しているという意味です。もし、別居していたとしても、仕送りなどで経済的に生活を支えているなど、事実上扶養している状態であれば同居と認められます。
 加えて、収入要件もあります。年金加入者が亡くなったときの前年の年収(前年の収入が確定していない場合は前々年の収入)が850万円未満(所得額で655万5千円未満)となっています。

遺族年金の種類や受け取れる人は?

 遺族年金には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があります。亡くなった人の年金加入状況などにより、いずれか一方、あるいは両方の遺族年金が支給されます。

 亡くなった人が自営業などの国民年金加入者の場合は遺族基礎年金のみですが、会社員や公務員の人など、厚生年金加入者が亡くなった場合には、家族構成によっては遺族基礎年金に加えて遺族厚生年金も遺族に対して支給されます。遺族基礎年金と遺族厚生年金、それぞれに要件が定められています。
 それでは、具体的に遺族年金の受給するための要件や、受給できるのは誰なのかを確認していきましょう。

■遺族基礎年金

<受給要件>
 下記、いずれかの要件を満たす人が亡くなったとき、遺族基礎年金を受給できます。

<受給対象者>
 遺族基礎年金を受給できるのは、「子のある配偶者、または子」です。
 簡単に言えば、基本的に子どもが高校在学中までは遺族基礎年金を受給できますが、子どもが高校を卒業した後は、遺族基礎年金は受け取ることができなくなるということです。
18歳になる年度末までの子ども、または20歳未満で障害等級1級または2級の子ども

■遺族厚生年金

<受給要件>
 下記、いずれかの要件を満たす人が亡くなったとき、遺族厚生年金を受給できます。

<受給対象者>
 遺族厚生年金の受給対象者には優先順位があり、下表のような順で受給できます。

 優先順位の関係から、「子のある配偶者」が遺族厚生年金を受け取っている間は、「子」には遺族厚生年金は支給されません。
 「子のない配偶者」の内、妻の場合は30歳未満であれば5年間のみ受給可能です。夫の場合は、妻がなくなった時点で55歳以上であれば受給資格がありますが、実際に支給されるのは60歳からになります(ただし、遺族基礎年金を同時に受給できる場合には、55歳から60歳の間であっても受給可能)。
 「父母」または「祖父母」の場合も同様に、55歳以上であれば受給できますが、受給開始は60歳からになります。

遺族年金の額はどれくらい?

 遺族年金の額は、遺族基礎年金と遺族厚生年金で異なります。それぞれどれくらいなのかを押さえておきましょう。

■遺族基礎年金

 遺族基礎年金の年金額は一律で、子どもの数によって加算があります。2025年度(令和7年度)の年金額は下記の通りです。

■遺族厚生年金

 遺族厚生年金は、遺族基礎年金のような定額ではなく、亡くなった人の過去の平均報酬や厚生年金加入期間によって計算します。
 基本的には、死亡した人の老齢厚生年金の「報酬比例部分の4分の3」の額です。報酬比例部分は、ねんきん定期便で確認することもできます。
 ねんきん定期便には、「これまでの加入実績に応じた年金額」という項目があり(50歳未満の場合)、厚生年金の加入実績のある人は、その時点での老齢厚生年金額が示されています。
 参考までに、遺族年金の年金額の一例を挙げてみます。

 なお、より詳細にご自身で遺族年金を計算してみたい方は、日本年金機構「遺族年金ガイド」に計算方法が載っていますので参照してみてください。

遺族年金を受け取るために大切なこと

 遺族年金は、遺された家族の生活を支える大切な年金です。しかし、遺族年金だけで生活を維持できるとは限りません。特に、自営業の人の遺族は受給できる遺族年金が限定されます。遺族年金だけではなく、貯蓄や共済なども活用しながら、万が一の事態に備えておくことが大切です。
 また、遺族年金に限りませんが、公的年金は保険料の未納があると、十分な額の年金を受け取れない可能性があります。転職のときなどに、年金加入の空白期間を作らないようにすることや、年金保険料を確実に納付することも大切です。

※この記事内容は、執筆時点2025年6月4日のものです。

高橋 浩史(たかはし・ひろし)
ファイナンシャルプランナー。FPライフレックス代表
(ウェブサイト https://www.fpliflex.com/)
住宅購入・老後資金準備・保険見直し相談など、ライフプランニングをベースにした家計全般へのアドバイザーとして活動中。金融機関でのセミナー・研修講師、書籍・雑誌、webでの執筆業務も行う。主な著者に「災害に備えるライフプランニング」(近代セールス社)、「老後のお金安心ガイド」「最新保険ランキング」(イースト・プレス)など。

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