ケアマネージャーの
選び方、付き合い方

介護経験のない方はもちろん、すでに介護をされている方にも是非ご覧いただきたいシリーズ「教えて介護」。第3回目のテーマは、介護において重要な役割を担う「ケアマネージャー」(通称ケアマネ) についてです。ケアマネの選び方や付き合い方を中心に、先生にお話しをお伺いします。

監修:

阿久津 美栄子

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ケアマネ選びは
地元の評判で決める

——前回の記事で、ケアマネは地域包括支援センターで紹介いただくとお聞きしました。この時の選ぶポイントなどがあれば教えてください。

阿久津氏(以下、敬称略)
 確かに地域包括支援センターで紹介を受けますが、実際は名前しか掲載されていない名簿をもらうだけなので、氏名以外の要素で選ぶことができません。ほとんどの方は、名簿の一番上にある方を指名するという単純な決め方をしているというのが実態です。

——どなたを選んでも問題ないということでしょうか。

阿久津
——本来はそうだと良いですけどね。でもやはり名前だけで安易に選ぶものではありません。人柄はもちろん、スキルや知識量は人それぞれです。地域包括支援センターで聞くことはできませんが、どのケアマネが優秀かなどは、その地域で介護経験のある方ならよくご存じです。
 親元から離れて暮らしている場合、親元=地元であることが多いと思います。私の場合もそうでしたが、地元の友だちから、「誰々さんが親身に話を聞いてくれる」、「誰々さんは仕事が早い」など、ケアマネさんの情報を収集し、それが大いに役立ちました。

——地域と全くつながりがない場合は、どうすればいいでしょうか。

阿久津
 地域のボランティア活動へ参加してみると良いでしょう。そこで生まれた接点は、すなわち地域とのつながりです。ケアマネの情報に限らず、その地域にどんな介護サービスがあるのか、評判がいい施設はどこかなど、有益な情報を得ることができます。

人によって異なる
知識・スキルの差

——地域の情報を得て選ばないといけないほど、スキルの差は大きいものなのでしょうか。

阿久津
 とても勉強熱心で知識をたくさん持っている方もいらっしゃれば、何人もの担当を抱え、数をこなすように仕事をしている方もいます。
 私のところに来た相談者で、ケアマネさんの提案に疑問を感じていらっしゃる方がいました。私が「このサービスが使えるはずですが?」と聞くと、専門職であってもそのサービスの存在すら知らなかったというケースもありました。
 その地域にある福祉のための施設やサービスなどのことを社会資源と呼びますが、この社会資源を知ろうとしないケアマネは案外多いというのが印象です。

——必要なサービスであっても、ケアマネが知らないことは、そもそも利用のしようがないということですか。

阿久津
 そうです。ケアマネは本来、社会資源の入り口の役割を担っているはずです。しかし、その逆にもなり得るということです。
 すべてがそうではありませんが、個人で独立されているケアマネさんは、地域の情報をしっかりと得て、要介護者のために努力をされている方が多いように思います。一方で、新しく参画してきた、たくさんのケアマネを抱える大手の事業所は、地域の社会資源を知らず、効率を求めるあまり型にはまった提案に終始する傾向が強いと感じています。これは競争原理が働かない現行制度の弊害だと言えるでしょう。

——ケアマネは、リクエストすれば交代できると聞きました。その見極め方はありますか。

阿久津
 例えば、最初は専門用語だらけで一方的な提案ばかりされていると思っていても、実はお互い話し合うと、その誤解が解ける場合もあります。電話のコールバックがないなど、不満に思っていることを伝え、改善されるのであれば、交代しなくても良いと思います。
 要は、話し合いができるかどうか、ここが大きなポイントなのではないでしょうか。
しかし、話し合いができない、改善が見られないのに、無理に続けることはないでしょう。交代することに遠慮は必要ありません。

——こちらの気持ちを受け止めてくれると安心できますよね。

阿久津
 ケアマネの中には、介護している方に向かって「頑張ってね」と声を掛ける人もいます。頑張っているのは当たり前で、他人事のようなこうした声に傷ついているご家族の方は実は大勢いらっしゃいます。
 本来、介護する方とケアマネは対等の立場です。そしてこのことを理解し、努力しているケアマネもいらっしゃいます。

 地域とのつながり、そこから得られる情報は、要介護者や介護する方も含めた皆さんの幸せにつながります。ケアマネだけでなく、皆さん自身も地域とのつながりを大切にしてほしいと思います。

——介護をするにあたって、ケアマネとの関係性と地域のつながりはとても重要ということがわかりました。
 次回は、介護施設を選ぶポイントについてお伺いします。

※この記事内容は、執筆時点2021年4月1日のものです。

阿久津 美栄子(あくつ みえこ)
1967年長野県生まれ。自身の介護経験からNPO法人UPTREEを立ち上げる。介護者のための「介護者手帳」を製作し、介護家族の支援モデルの確立に注力している。2019年4月「介護あっぷあっぷくん」(介護未経験者・初心者向に向けて介護の基本的な情報、介護保険の仕組み、介護に利用できる公共サービスなどを教えてくれるLINE公式アカウント)をリリース。著書に「ある日、突然始まる 後悔しないための介護ハンドブック」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、「家族の介護で今できること」(同文書院)。

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