子どもの自立心
どうやって引き出す?

7回目のテーマは前回に引き続き、「自立心」です。前回では時間感覚を養う重要性をお伝えしましたが、今回は、日常のコミュニケーションの取り方を中心に、子どもにどういった声のかけ方をすればよいか、具体的なフレーズも併せてご紹介します。

監修:

小川 大介

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早く宿題しなさい!
子どもは命令では動かない

 テレビアニメのお母さんキャラの定番のセリフ「早く宿題しなさい!」。ついつい口に出してしまう親御さんも多いでしょう。しかしその時のお子さんのリアクションってどうですか。素直に「はいっ!」と返事をする子は、ほとんどいないですよね。またご自身の体験でも「宿題しなさい」って言われると、やる気なくしたなー、と当時の記憶がよみがえる人も多くいらっしゃることでしょう。やはりこういった命令口調は、実際子どもには効果がありません。

 本来宿題は、子ども自身の学力を伸ばすためにあるものです。しかし命令をされると「お母さんがやれと言っているからやらないといけない」と、まるで自分自身のことではないような感覚になってしまうのです。これでは主体性はなくなってしまいます。

「主体は子ども」と理解させる
3つの言い方

 そこで子どもに主体性を持たせるために、ぜひ覚えておいてほしいのが次の3つのフレーズです。これを、自立心を引き出す魔法のフレーズと呼んでいます。

①「何を手伝ったらいい?」(基本的スタンスの声かけ)
②「お母さん(お父さん)できないよ~」(子どもの自主性を刺激する声かけ)
③「何があったの?」(あきらめずにやり抜かせる声かけ)

この3つのフレーズはどのように使えばいいのでしょう。具体的に見ていきましょう。

宿題をするのは子ども
親の立場を暗に伝える

 「宿題をやる」と言ったのに、実はやっていなかった。そんなときに使うのが①のフレーズです。「この宿題がまだできていないの?じゃあ、今からやろうね。で、何を手伝ったらいい?」。使い方はこういう具合です。子どもが宿題をしない原因は様々ですが、よくある理由の一つが、「どうすればよいのかわからない」と、困って立ち止まってしまうことです。問題が難しい、解き方が分からない、何から手を付けて良いのかわからない。スムーズにいかず、混乱し、どうしたらいいのか分からなくなって、「やーめた」となってしまいます。

 ここで大切なのは、分からないこと、躓いているところを子ども自身が話せるように、促してあげること。つまり「何を手伝ったらいい?」と声をかけることで、子どもが自分なりに何か答えられるようにしつつ、「これはあなたが主体的に考えることなのだよ」というメッセージを子どもに伝えるのです。そして、親は手伝う立場なんだよというスタンスを見せることがポイントです。

大人だってできないよ
弱みを見せると自立心アップ

 また親御さんは家事に仕事に追われ、宿題を見てあげる余裕がないこともしばしばですよね。そんなときは素直に②のフレーズ「できないよ~」「わからないよ~」と言いましょう。意外かもしれませんが、親が子どもに弱みを見せることは、自立心を目覚めさせるために効果的です。親という絶対的な存在に管理されているのではなく、自分も家族というチームの一員で、親ができないなら自分ががんばるしかないなという思いが生まれるのですね。

「何があったの?」で
一緒に対策を

 最後はフレーズ③の使い方です。たとえばお子さんが簡単な問題や、昨日までできていた問題を間違えたりすることがあります。そんなとき、親御さんはイライラしてついつい「なぜできないの?」「どうしてやらないの?」など心のままに「なぜ?!」をぶつけてしまいがち。しかし、「なぜ?」という言葉は、お子さんにとってはまさに詰問。刃物のような言葉なんです。親としては「どうして?」と尋ねただけのつもりが、子どもの側にとっては尖った刃で傷つけられて、心に芽生えかけたチャレンジ精神が削がれてしまいます。

 こんなときに使うのがフレーズ③です。「なぜ」ではなく「何があったの?」と聞いてあげてください。「何?」と聞かれたら、子どもは理由となった出来事を答えられます。そして子どもなりに「何」を答えてくれたら、じゃあどうしようか?と対策を一緒に考えることができます。こうすると、子どもももう一度頑張ろうと思えるのです。

 この3つのフレーズは、言い慣れていないと必要な場面で出てこないかもしれません。しかし、この言い方ひとつで子どもの自立心を引き出すことができるのです。日ごろから、練習して口馴染み良くして、日常のお子さんとのコミュニケーションを変えていきましょう。

<子どもが育つ遊びメモ>

「交互読み遊び」

対象:小学校低学年


 親がワンフレーズ読むと、子どもが同じワンフレーズを繰り返すという絵本の音読遊びです。1冊読んだら、次は子どもが先導する。最終的には、子どもから親に読み聞かせをしてもらいましょう。親子で本の楽しさを実感できれば、その後の読書週間も自然と身につき、自分で勉強できる子に育っていきます。

※この記事内容は、執筆時点2021年7月6日のものです。

小川 大介(おがわ だいすけ)
教育家。中学受験情報局「かしこい塾の使い方」(https://www.e-juken.jp)主任相談員。
京大法を卒業後、社会人プロ講師によるコーチング主体の中学受験専門個別指導塾を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。塾運営を後進に譲った後は、教育家として講演、人材育成、文筆業と多方面で活動している。6000回の面談で培った洞察力と的確な助言が評判。自らも「見守る子育て」を実践し、一人息子は電車の時刻表集めやアニメ「おじゃる丸」に熱中しながらも、中学受験で灘、開成、筑駒すべてに合格。
メディア取材も多く、著書多数。最新刊『自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て』(KADOKAWA)。
You Tubeチャンネル:見守る子育て研究所

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